加齢による口臭の原因

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年齢を重ねるごとに体臭がきつくなっていくのを感じている人は多いと思いますが、口臭も加齢と共にきつくなる場合が多いです。

年を取ると、いったいどのような理由で口臭がきつくなっていくのでしょう。

加齢と口臭の関係

加齢が口臭の原因となる理由には次のようなものがあります。

唾液の減少

加齢による口臭の原因として最も多いのではないでしょうか。

唾液には口臭を作り出す細菌を殺菌する抗菌作用や、また口の中の食べカスなどを洗い流し清潔に保つ、自浄作用があります。

そのため唾液の分泌不足は、口臭の発生に直結します。加齢による唾液の減少の理由としては、

唾液を分泌する唾液腺の萎縮
特に60歳位から形状に変化が見られて、分泌量に影響してきます。

体内の水分量の減少
成人男子では体内の水分量が60%なのに対し、高齢者になると50~55%となります。体内の水分量が少ないと分泌される唾液の量も減ってしまいます。

また唾液の成分に関しても加齢(30歳を越えた頃から)と共に、さらさらの唾液の分泌が減り、粘り気の多い唾液の比率が増えます。

口臭を抑えるには、さらさらの唾液の方が効果がある為、この点も加齢による口臭の原因となります。

歯周病

歯周病は口臭を発生させる病気としては、最も大きなものです。

口臭の正体はほとんどが、口の中の細菌が増殖する時に作り出してしまうガスなのですが、それらは揮発性硫黄化合物である、

  • 硫化水素
  • メチルメルカプタン
  • ジメチルサルファイド

というガスががほとんどを占めます。

通常の口臭に多いのは、硫化水素なのですが、歯周病菌は硫化水素よりも臭いのきついジメチルサルファイドを作り出してしまうのです。

その為、歯周病にかかっている人の口臭はきつくなるのです。

歯周病と年齢の関係は、単純に年を取ると歯周病にかかる比率が高くなる、という事です。

自分は関係ないと思っている方、注意してください。

日本人は欧米人と比べ歯周病にかかっている人の割合が多く、 30歳以上の約80%の人が歯周病にかかっていると言われています。

80%です!!

かなりの割合でかかっていると言っていい位の数字です。

それでも自分は大丈夫、腫れてもいないし、出血も無いから、と思っている人へ。

歯周病は初期の段階ではほとんど自覚症状が無いため、気付いた時点ではかなり進行している、という場合が多いのです。

つまり歯周病は非常にかかりやすく、気付きにくいので加齢と共に進行していき、年を取るごとに口臭もきつくなっていくという事です。

大丈夫と思っても、歯の掃除と思って定期的に歯医者さんに診てもらいましょう。

肝機能の低下

肝臓には色々な働きがあるのですが、その中に解毒作用があります。

これは体にとって有害な物質を水に溶ける物質に代えて尿などから排泄させる働きです。

この働きが弱くなると有害物質が体内に残り、臭いの成分を出します。

これが血管に溶け出て肺にも周り、呼吸と一緒に口臭となって吐き出されるのです。

そして年を取るにつれて、肝臓のこの解毒、分解作用も衰える為、口臭も発生しやすくなると言えるでしょう。

筋力の低下

年齢を重ねるごとに、体中の筋力が低下していく事を感じる事は多いでしょう。
その事が口臭の発生にも関わってきます。

咀嚼筋(そしゃくきん)
食べ物を噛み砕くときの咀嚼筋や、舌の筋力の低下により唾液の分泌が減少し、結果口臭が発生する原因となります。

下部食道括約筋
食道と胃の間にある噴門部から食道側にある筋肉です。
胃、噴門の画像

どの様な働きがあるかというと、食べ物が食道を通るときは緩んで通過させ、それ以外の時に閉める事により食べ物や、胃酸などの逆流を防いでいます。

この筋力が弱まると、胃酸が逆流してきて食道で炎症を起こして、胸やけや痛み等の症状が現れます。

この病気を逆流性食道炎というのですが、この状態ではツンとくる酸っぱい刺激臭が口臭として発生してきます。

咀嚼筋に関しては、出来るだけ噛みごたえのあるものを食べて食事中の噛む回数を増やすなどで鍛える事が可能です。

下部食道括約筋に関しては、鍛えるというよりも食事を見直して、油っぽいものを減らす、野菜を取るなど心掛けるようにしましょう。

入れ歯・ブリッジ

歯周病と関係してきますが、年齢とともに歯の状態は悪くなってくることが多いと思います。
その為入れ歯やブリッジなどを使用する事になります。

入れ歯の場合は手入れを適当にしていると、入れ歯自体から臭いが発生しますし、装着時には歯ぐきと入れ歯の接地面に唾液が留まり、そこから臭いを発生させます。

ブリッジの場合は、どうしても磨き残しが出来やすいという事です。

ブリッジで入れた仮の歯と、元の歯の間、歯茎との間などはフロスも入らないため汚れが残りやすく、口臭も出やすくなってしまいます。

薬の副作用

加齢とともに、持病も増え薬を飲む量も増えてきます。

薬の中には副作用として、「口渇」(口が渇く)というものがあります。

風邪薬を飲んだ時に、のどが渇く経験をした事がある人もいるんじゃないでしょうか。

口が渇いている状態というのは、口の中の唾液が少ない状態であり、口臭が発生してしまう環境と言えます。

加齢による口の臭いがあの臭い?

ちなみに口臭の原因をいろいろみてみましたが、加齢による特有の臭いにはある物質も関わっています。

それが イソ吉草酸(いそきっそうさん)です。

イソ吉草酸
  • 化学式 C₅H₁₀O₂ 
  • 正式名称 3- メチルブタン酸
  • 常温では無色透明の液体
  • 植物や精油に含まれる脂肪酸
  • 揮発性あり

イソ吉草酸という名前を聞いた事がある人は、ほとんどいないと思いますが、その臭いを嗅いだ事が無い人もほとんどいないと思います。

実はこのイソ吉草酸、足の裏のあの臭いの成分なのです。

ある研究で加齢によって口の中の細菌がどうなっていくのかを調べたのですが、最初に挙げた揮発性硫黄化合物を作り出す細菌の数は、年齢に関わらずほぼ同様に存在していたのに対し、年を取るにつれて増加する細菌が見つかりました。

その細菌は、「プレボテラ属の細菌」や「ポルフィロモナス・ジンジバリス」という歯周病の原因菌です。

そして検証の結果、これらの細菌が年齢により増え、イソ吉草酸の増加に関わっている事も分かりました。

つまり年を取るにつれて、イソ吉草酸を作る細菌が増え、実際にイソ吉草酸の発生している量も増加するのです。

その結果、中高年の口の中では、従来から発生する揮発性硫黄化合物と、イソ吉草酸が混ざる事で特有のきつい口臭を発生させているのです。

このように年を取る事によって、口臭を発生させてしまう色々な原因が出てきます。ただし、中には対策のできるものもあり、特に唾液の減少、歯周病には注意しましょう。