口の中でおこる口臭の6割は、舌苔(舌の表面に出来る白い苔状の汚れ)で発生していると言われています。
健康な舌でも、うっすらと白色をしているものなのですが、舌のピンク色が見えなくなるほど舌苔が厚く付着してしまうと、口臭もきつくなってきます。
そんな舌苔はなんでできるんでしょう?
そして対策としては、どんなことに気をつけるべきなんでしょう?
舌苔は何が原因でできる?
舌苔が付く事自体は病気ではありませんが、何らかの体の病気と関連して増えることがあります。
また精神状態や生活習慣の悪化などによる、体調の不良などからも増える傾向があります。
そして、生理的口臭と呼ばれる、誰にでも起こる、時間帯や状況などによって発生する口臭が最も多く発生する場所となるのです。
舌苔が作られる仕組み
舌の表面には、舌乳頭(ぜつにゅうとう)という小さな突起があります。
それらは場所や形状によって、4種類に分類されるのですが、味を感じる、味蕾(みらい)という細胞も大部分がこの舌乳頭に存在しています。
この小さな突起があるのは、舌の表面積を広げて味覚を感じると共に、舌を守る為でもあります。広さは畳でいうと、10畳分にもなるといわれていて、この入り組んだ表面により舌乳頭は味覚を感じるという以外に、舌の表面に唾液を溜めておく事もできます。
この舌乳頭のうち、舌苔に関わってくるのが、糸状乳頭という0.5~2.5mm程の突起なんですが、この糸状乳頭の間に
- 食べカス
- 粘膜からはがれた細胞
- 細菌の死がい
などが溜まり、それらをエサにする為、細菌が集まり増殖を繰り返します。
舌苔の中で細菌がそれらを分解し、腐敗した時に発生する揮発性硫黄化合物(VSC)といわれるガスが口臭の元となります。この生理的口臭で発生するガスは次の3種類がそのほとんどを占めます。
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ちなみに、歯周病の人は歯周病菌が揮発性硫黄ガスの中でも、メチルメルカプタンというガスを多く作り出し、口臭は魚や野菜の腐ったような臭いといわれています。
それに対し歯周病がなくても誰にでも起こってしまう口臭(生理的口臭)では、舌苔の中で、VSCの中の硫化水素という物質が多く作られ、臭いは卵の腐ったような臭いといわれています。
舌苔が厚くなる要因
また舌苔が厚くついてしまう要因としては、
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などがあります。
加齢によるもの
年を取る事により、口の周りや、舌の筋肉の低下が起こり、新陳代謝も低下してきます。
これらは唾液の分泌の低下につながります。
唾液には自浄作用があり、舌苔を洗い流す役割もあります。唾液の分泌量の低下は、舌苔が厚くなる原因とります。
胃腸の不調
食べ過ぎや飲み過ぎ、ストレスなどが原因で胃の負担が大きくなり、調子が悪くなった時に舌苔が増えることがあります。
胃と舌には深い関連があり、胃で起こっている不調は、同じ消化器であり粘膜でもある舌の表面にも出てくるといわれます。
胃と口は消化機能を持つ、一つの臓器ととらえているお医者さんもいます。
冷たいものや生もののとりすぎも、胃腸を冷やし舌苔が増える要因となります。
また、お酒の飲み過ぎや脂っこいもの、味の濃いもの、甘いものも過剰な摂取が舌苔を増やします。
口呼吸による口の乾燥
寝ている間などの口呼吸は、口の中をすぐ乾燥させてしまいます。
数十秒たった位から、すでに唇や口の中の渇きを感じると思います。口の中が渇くという事は、十分な唾液が存在していない事を意味します。
夜寝ている間は特に唾液の分泌量が減っているので、口呼吸だと渇きやすくなり舌苔が厚くついてしまいます。
舌苔が口臭の原因なら、それを取り除けば口臭解消! といけばいいのですが、そう簡単ではありません。
舌苔の色による違い
舌苔は色で体の調子を判断できるといわれてます。色と原因の関係を知っておくことは対策にもつながります。
ちなみに舌の表面が正常な時の色というのは、薄い白色をしている状態です。舌苔が全くないあまりに鮮やかなピンク色の舌というのは、逆に正常とはいえません。
ある程度の舌苔は表面を保護する為に必要であり、また舌乳頭の先は角質化されているので、少し白くなります。
舌の表面が少し白いからといって、歯ブラシ等でピンクになるまでゴシゴシ磨いていると、この舌乳頭の先がはがれてしまい、逆に舌苔が多くなって口臭が発生するばかりでなく、舌の働きである味覚にも支障が出る事もあります。
舌苔が白く分厚い時
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舌苔が黄色の時
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舌苔が黒い時
見た目だけでも体が悪そうですが、病気の慢性化、重症化の際に見られる事があります。
免疫力の低下により、一部の細菌が増殖する事が原因となる事もあるようです。
舌苔のとりすぎは口臭悪化の原因?
世の中には、舌磨きなどの、舌苔を取り除くためのグッズや方法が数多く紹介されています。ただし舌苔の除去は、やりすぎると口臭が無くなるどころか、 逆にひどくなってしまう事があります。
舌苔の溜まる舌の表面には、舌乳頭という小さな突起があると言いましたが、この突起は非常に弱く、繊細な為とても傷つきやすくなっています。
舌磨きなどをきつく過剰に行うと、この舌乳頭がはがれてしまいます。
そうすると、どうなるでしょう。
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また傷を修復する過程で、再び舌苔が厚く付いて悪循環を繰り返すこともあります。
舌苔をとっても解決しない!
舌の表面は粘膜で非常に弱く、保護する意味からも最低限の舌苔は必要です。
また口の中の細菌のバランスをとるのにも役立っています。
その為、もしすべてを取り去っても、体が自分を守ろうとする働きによって、舌苔はまた発生します。
そもそも、舌みがき等を利用して舌を傷つけずに舌苔をきれいにすべて取り除くことは、非常に難しいです。多くの細く小さな突起が表面を覆っているのですから、当然です。
さらに舌乳頭の先は、角質化していてわずかに白色をしている為、これも舌苔と思い、取れるまでこすった結果、舌をキズつけてしまう事も。
舌の表面はうっすらと白い色をしているのが正常であり、鮮明なピンク色をしている時は、熱を持った異常な状態と考えましょう。
舌苔が口臭の原因なのは間違いないですが、物理的に磨いて取ろうとすると、舌を傷つけてしまい、逆に口臭が悪化してしまったり、他の弊害が出てきてしまいます。
舌苔が厚くなってしまう原因や生活習慣を理解して、対策を取る事が必要となります。
舌苔なくすために気を付けるべき、2つの事
舌苔を減らすうえで、特に気を付けたい点として2つあります。
それは、「唾液の分泌量を増やす」事と、「食事のとり方に気を付ける」という事です。
唾液の分泌量を増やす
唾液をよく出すには、まず水分をきっちり取りましょう。
体内の水分が足りていない場合は、当然唾液の分泌量は減ってしまいます。
その際、コーヒーや緑茶などカフェインを含むものは、利尿作用(尿の量を増やして体の水分の排出を促進する作用)が働き、逆効果です。
ガムやあめを食べるのも効果的です。
甘味料が味覚を刺激して唾液が出るし、口、あご、舌を動かす事でも分泌を促します。その際、キシリトール入りのものにすると、酸が出来ず虫歯の予防にもなります。
舌の運動もまた確実に唾液を分泌させます。
口の中で舌を上あごや頬に押し付けたり、歯茎などに沿ってぐるぐると回してみてください。少し疲れますが、口の筋肉を鍛える事にもなり、加齢による筋力の低下にも有効です。
食事のとり方に気を付ける
まず食事の量ですが、一日の食べる量が多いと、当然消化する胃に負担がかかり良くありません。
昔から言う、腹八分目を心掛けましょう。
また、お肉、野菜等のバランスを良くすることは、胃や舌だけでなく体にも大切なことです。特に野菜は、胃への負担を減らす為に必要なので、積極的に摂りましょう。
そして気を付けたいのが、 食事の際の噛む回数。
昔と比べて、一回の食事での噛む回数が減っていると言われますが、実はこれは非常に大切なことです。
よく噛む事で、胃、舌に良い点が2つあります。
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舌苔を取るには、即効性はなくても日頃の体のケアで厚くなるのを防ぐ、という事は大切です。
舌は繊細な器官なので、歯ブラシなどでゴシゴシ磨くのはやめましょう。どうしても汚れを取りたいときは、専用の舌ブラシでやさしく行う事が大切です。